山林竹田更良記

思いつきを。

家政人現る

  最近、刃物が怖くなった。包丁など持っていると、尻がヒンッとなる。包丁で野菜を切っていると、自分の指を切る幻覚が見えて気が休まらない。どうやら自分で研いだために包丁の切れ味というものが実感されてしまったようだ。全く料理の修行が捗らない。これでは家政人の三本柱、掃除洗濯料理の一本が欠けたままになってしまう。

  それにしても、私は男であるだけでなく、ガリガリ丸刈りである。ミイラ。とてもじゃないが家庭的な感じは受けない。人見知りだし、女性が苦手である。果たして、私とともに生きようと思ってくださる素敵なバリキャリウーマンの方は現れるのだろうか?

  不安で眠れぬ夜は、まだまだ続くようだ。

  

絵画世界

いやあ、愉快愉快!

彼はニッコリしてふたつえくぼ。

めんたまをぐるぐる。

いやあ、愉快愉快!

僕もニッコリしてひとつえくぼ。

めんたまをぐるぐる。

絵の中の僕らは、客を驚かす。

おや!目の向きが変わった!

ちょっとちょっと、手が開いたよ!

絵にとらわれて動けないまま、僕らはその日暮らし。

表現しきれず言葉はなくて、朽ちるその日を待っている。

館長も知らない僕らの秘密。

作者さんだけは知っている。

 

やじろベェ

腕を切ったり薬を飲んだりできることはたくさんあるけどそれはひまつぶし。何もない苦痛から逃げられるから最高だ。あるいは作業。無心と快楽が得られるものだ。あるいは生き甲斐とも言えるだろうか?どちらも私とは無縁なものだ。中庸の苦しみは半殺し、やじろべえの気持ち。こくりこくりと揺れながら心が落ち窪んでゆくものだ。いっそ落ちたい、片腕を失うとも。そうも思い切れない悲しいところにあるのだ。ただただ、片腕が落とされるのを待ちわびる日々。八方塞がりここに極まれり。

無視できない存在

  都会と田舎のなんと違うことだろう。

  ああ疎ましくて仕方がない。あなたとわたしの間の相克。君がどうかは知らないが、僕は気にして、神経をいちいちすり減らしているのだ。何十何百のあなたとの相克。散り散りになって途方にくれてしまう私は過敏か?お前のことだぞ、虫!

自転車

コーと走ってキシキシ震える僕の自転車

ポンコツエンジン積んで行く

地をはい地上を駆けめぐる

ぎゅむと止まってぐわんと加速

空の色してよく走る

でもポンコツエンジン積んでいる

ポンコツ積んでどこへ行く

シンナー

枕元にマニキュアを置くな。朝起きたらラリってしまう。きっと素敵な夢を見る。スプレー式ケミカルの香り、売れてるものはいい匂い。甘くて体に悪い匂いが引き付けるのは破滅願望に自傷の快感。でもあまりラリってしまうことはないんだ。密室で使っても気分が悪くなる程度でその先へ行ったイメージは出来ない。きっとイってもアルコールと大差ないんだ。もっとも身近で手軽な麻薬、アルコール。忘却の薬。なんだ、みんなわかってるんだ、どこかで。生きる虚しさが。