山林竹田更良記

思いつきを。

爪噛み

  歯が欠けるほど爪を噛んで、肉も噛んで、血が出た。爪と肉の間の、薄くて硬い層を引っ張ると、血が出た。

  どこまでもぬるく間延びしてゆく甘皮にしびれを切らし、歯で引っ張ったらべろんと剥がれて組織液がにじみ出た。血は出なかった。

  爪と指の間に、少し固い皮がある。歯ごたえはコリコリして、人の皮の味が感じられる。柔らかなゴム臭。粉っぽさに、少しの甘み。穏やかな味だ。ここを剥がすと、痛い。でも、とても心地よい刺激だ。指の丸みに沿って綺麗に剥がれる時など、たまらない。くるりと痛みが走り、丸く皮が剥がれる。ただ、深く剥がれるのはいけない。耐えきれない痛みに途中で千切る外ないし、血も出る。その指はしばらく使えない。

  風呂上がりは薄皮がよくはがれる。

  ピリィとはがれ、付け根までゆく。そこで根からとれればよいが、大抵は途中でちぎれる。そうしたら後でニッパーでぐぐいと引っ張るしかない。じんわりとにじむ体液など無視して、引っ張ると、指の奥に快感があり、ずるりと根から抜け出でてくる。硬度のグラデーション、プチプチと噛みちぎれるふやけた根と、しなやかで断ち切れない先端をたのしめる。

  そうだ、爪を噛むことは、気持ち良いことなのだ。爪を噛まない奴らにはわからない事だ。